私たちは、2011年3月11日の東日本大震災から今日まで、24時間365日休むことなく災害の情報を多くの人に届けてきました。そしてこれまで、地震や津波以外にも火山の噴火や豪雪、それに台風や大雨による洪水と土砂災害、竜巻や大停電などたくさんの災害を経験してきました。
経験を重ねるたびに、情報の伝え方を考えたり見直したりしながら、いのちを守るための正確な情報を迅速に届けるために、防災情報配信のシステムを整備してきました。
私たちは3月11日のあの日、被災地の人たちが停電してテレビが見られなかったり、ラジオの用意が手元になく、大津波警報がすぐに伝わらなかったことで避難が遅くなってしまったということに気づきました。そして、Twitterや携帯電話・スマートフォンによる情報の流通が大きな力を発揮したことにも気づきました。テレビやラジオだけではない新しい情報の提供が求められていました。
私たちは、東日本大震災のすぐあとから気象庁が発表する防災気象情報の配信をはじめました。当初は手動で文章に起こして伝えていましたが、いのちを守るために1秒をあらそう重要な情報の配信に時間をかけることはできないと考え、自動化に取り組んできました。
そのあと、誰にでもわかりやすく見やすい情報の提供を考えて、作画エンジンの開発に取り組みました。そして、私たちが初めて画像つきで地震情報をお伝えしたのは2013年9月30日のことでした。作画エンジン開発では、生成時間の速さのほか、デザインにもこだわりました。作画エンジンの運用開始から現在まで、この優れたデザインは変わらずに多くのユーザーに届いています。
近年、日本は経験したことのないような災害と危機に立て続けに直面しました。2013年には豪雪や淡路島地震、台風18号、そして台風26号による伊豆大島土砂災害。2014年には広島土砂災害、御嶽山の噴火、豪雪。2015年には口永良部島の噴火や関東・東北豪雨。2016年には熊本地震、鳥取県中部地震、内浦湾地震、岩手岩泉水害、東京大停電、福島県沖を震源とする地震と津波。これらの災害では、いつでもゲヒルンの配信する情報が多くの人の手元に届いていました。
私達が大切にしていることは、「正確で迅速な情報の配信」と「伝わるデザイン、伝える防災」で、国民の生命と財産を守り、被害を少しでも減らせるようにたくさんの人に情報を届けることです。現在、ゲヒルンで防災情報配信サービスを担当しているのは、東日本大震災で被災した人と熊本地震で被災した人です。どちらも震度7という強い揺れに見舞われて甚大な被害が出た災害ですが、その教訓を次に活かして被害を少しでも減らそうと、サービスの開発に取り組んでいます。
「あの日、この情報を届けられたらどんなに良かっただろう。」
この10年、何度も何度も、何度も思いました。しかし、情報を過去へ送ることはできません。
その報せを過去へは送れないのだから、これまで防災システムの仕組みを改善してきた先人たちと同じように、次の世代の人たちに、少しでも良い防災システムを「仕組み」として残していかなければなりません。エンジニアだからこそ、失敗は「仕組み」で改善しなければならないと思っています。